先週、五反田駅の階段を降りようとしてハッとしました。
世界は五反田から始まった。
うすうす気づいてはいたけど、やはりそう正面切って言われるとたじろぐものです。
1966年、戸越銀座で生まれたノンフィクション作家、星野博美(ほしの・ひろみ)さんの著書のタイトル。
それがJR五反田駅の階段上に広告されていたのでした。
なんといっても世界のはじまりは五反田!という、彼のホーキングも(知ったら当然)車いすから立ち上がる衝撃の新説。
縁あって五反田で働いて何十年。これは読まねばなりますまい。
ケンコバさんもね!五反田に縁のある皆に読んで欲しい、知って欲しい本
今日、私たちが毎日なんの不安もなく歩いている五反田駅近くの地面が、ランチを食べ、コーヒーを買うあの店のある土地が、焼け野原になった事実(1945年(昭和20年)5月24日、城南大空襲)がありました。
戸越銀座生まれの著者は、五反田駅を中心とした半径約1.5㎞を「大五反田」と名付け、そこを「故郷域」と定めます。
五反田で町工場を経営していたお祖父さんの手記を手がかりに、星野家ファミリーヒストリーとともに、著者の故郷域(五反田・戸越銀座・上大崎一帯)に暮らしていた一般庶民「生活者の戦争」の実態にも迫っています。
55億5千万?!詐欺の舞台になったあの古い旅館も登場
本書には、五反田界隈で働くひとなら「あー、あそこね」とすぐ判る建物やお店の名前がたくさん出てきます。
いまや絶滅寸前の数少ない喫煙スポットの目の前、旅館「海喜館」もそのひとつ。
古色蒼然としたその様相から「かいきかん・怪奇館」と読まれる事も多いようですが、正確には「うみきかん」です。
五反田駅から徒歩2分、川鵜が背伸びしカメが日向ぼっこする目黒川は本村橋のたもとにあったこの旅館。
2017年、地面師による詐欺事件で大手住宅メーカー「積水ハウス」が総額63億もの金をだまし取られた舞台装置として使われたのは記憶に新しいところ。
その後、旭化成不動産レジデンスが正式に土地を買い取り、2020年4月には解体が始まりました。
2024年3月末までには、地上30階・地下1階・高さ105.76m・延床面積21,596.58㎡のタワーマンションが建つ予定です。
海喜館と共に、うっそうと枝を広げていた庭の木がなくなりカラスの寝床も減ってしまいました。
アホな上司の顔をおぼえて、ヤツがタバコを吸いに行くたびに頭をつついてくれたカラスは今どこで寝てるかな。
五反田に縁ある幸運を味わう
本村橋から五反田大橋方面をみると、
川があり、橋があり、海に向かって空が拓けて、その中間に浮かんだ池上線がゆっくり走るのが見えます。
商業施設「レミィ五反田」の4階に改札口がある池上線五反田駅から出発したばかり。
スピードをあげる前に次の大崎広小路駅についちゃいますからね。いそいでもしょうがない。
同じ職場のクルーさんたちには、まさにこの池上線はつっかけ代わり。
地方出身者の私には働くだけのゴタンダも、ここに生まれ、育ち、暮らす人たちには故郷なんだなあと思います。
(私のように)県境をまたいで通勤しているひとも多いと思いますが、人生の時間の絶対量を通勤に(仕事ではない!)ささげている私たち。
実はなじみの土地はとても限られていて、何十年通っていようと利用駅が一駅でもちがえば「降りたことがない」という人もいるのではないでしょうか。
五反田に通って20年近くがあっというまに過ぎました。
私にとって東京は、河・橋・道で構成された人体です。
私はその細胞のひとつとして呼吸し、もぞもぞと活動してきました。
五反田周辺は、私という細胞がいた東京の内臓のひとつです。
おまけ。五反田に名店は数々あれど、やっぱりここのは一度食べときましょう。
立正大学うら、平和軒。
きちんとしたじいちゃんがひとりでやってるので、待つの覚悟で時間のある時に、、。
おいしいよ。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。ふじみのでした。またね。
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